水差しと猫
へんな場所の水を飲む猫がたまにいる。
猫がネコ用の水入れ以外からチロチロと水を飲む。それを見るのが好き。日常の臨時ボーナスである。
実家のある栃木県。茂木町では陶器が有名で、たくさんの釜や陶器のお店のある通りには、野ざらしの展示品?として小道や軒先に街中にでっかい壺や小さな壺がいっぱいある。
そこに溜まった水をチビチビ飲む猫を見る機会がよくあった。
盆のような壺のような、用途のわからない焼き物に溜まった水を、うまく首を伸ばしつつ周りの人間を牽制しつつ試行錯誤して飲む姿がなんだかおかしかった。
飼い猫でも、トイレのタンクに流れる水とか、飼い主のコップからとか、色々あるようだ。わざわざ人間に水道を少しひねってもらって細く流れる水を飲む上級者も。
猫の一服。
私が一番記憶に残ってるのは、鎌倉で見た猫。梅雨時期になるとよく思い出す。
寺の奥の日陰、苔やシダの茂る絶壁を滴る湧き水を飲んでた。絶壁を這うようにひたひた流れ落ちてくる水。それを顔から胸のあたりまでビッショビショにしながら飲んでた猫。
その猫が振り返ってこっちを向いた時、ビショビショなのに本人は澄ました顔だったもんで笑ってしまった。
通りかかった近くの民家の方が「この子ねぇ変わってるのよ、この辺いっぱい野良猫がいるけど、この子だけよ、こんなとこでびしょ濡れになって水飲むの」と言っていた。
変わり者が変わり者然としてのびのび水飲んでるって、なんだかよくわからないけどニコニコしてしまう。
ニッチなこだわりや妙な好みを追求するのは人も猫も楽しいんだな。
私はそんな人を見てるのが好きかもしれない。
毎度ながら「なんとなく好き」なもの。